文=大島和人 写真=B.LEAGUE

ベンチから投入され、SR渋谷に勢いを与えた復帰戦

第1クォーター残り6分30秒。渋谷サンロッカーズの若き司令塔が、1カ月半ぶりにコートへ戻ってきた。青山学院記念館の黄色いブースターたちが、彼の登場にどっと沸いた。それだけ皆が復帰を待ち望んでいたのだろう。ベンドラメ礼生にとっては10月23日(三遠ネオフェニックス戦)以来となる実戦のコートだった。

試合終了後のインタビューでは、チームメイトの心遣いもあった。会場MCがヒーローとして指名したのは24点を決めた大塚裕土。しかし大塚は「礼生が戻って来てくれたことが一番大きい」と東海大の後輩にマイクを譲った。チームメートにとっても、待望していたカムバックだった。

「うれしいですね。ホームで、良いタイミングで復帰したなと思います」

ベンドラメはそう微笑む。「入りは自分なりに良いプレーができたんじゃないかなと思います」と振り返るように、彼はコートに入った直後のスローインで早速アシストを記録。大阪エヴェッサのボールでプレーが再開されると、今度は猛烈なチャージをかけてスティールにも成功する。

コートに入って10秒間でいきなり、彼はチームに勢いをもたらす攻守を見せた。ベンドラメが入ったときには1点だったリードが、第1クォーター終了時には12点にまで広がっていた。

「ベンチから出たときは自分の持ち味であるディフェンスと、アグレッシブなプレーでチームに違う流れを呼び込みたい」という自身の意気込みをしっかり実現してみせた。

ベンドラメと清水、タイプが異なることでの相乗効果

今まで大きなケガとは無縁だった彼にとって、「あれだけ長いことベンチに座っていたことがなかった」と言う、もどかしい欠場期間だった。右肩を傷めた直後は手が上がらず、シュートを打てない状態だったという。しかし今は痛みもほとんどない。10日の大阪エヴェッサ戦では19分11秒のプレーで6点を決め、5本のアシスト、5つのスティールも記録。91-66という大差の勝利に貢献するプレーを見せた。

渋谷はもう一人の主力ポイントガードである伊藤駿も負傷しており、12月に入ってからの3試合はプレーしていない。2人の欠場期間は35歳の清水太志郎と、本来は3番であるキャプテン広瀬健太が司令塔の役割を担っていた。ベンドラメの復帰によってチームの選択肢が増え、広瀬を本来の仕事に戻すことができる。

ベンドラメは言う。「僕と(清水)太志郎さんは明らかにプレースタイルが違う。僕の持ち味は勢いのあるプレーで、アップテンポに持って行くところ。でも常にアップテンポは良くないと思うし、そういったところで太志郎さんがチームを落ち着かせられればいい」

23歳のベンドラメは若く、アグレッシブなプレーをする。ただ試合運びには緩急が必要で、清水の起用で落ち着く時間があるからこそ、ベンドラメの良さも出る。逆にベンドラメの速さがあるから、今度は清水も生きる。11日の大阪戦でも、2人の併用には相乗効果が生まれていた。

「広瀬さんの持ち味は縦のドライブや、ボールをもらってリングにアタックする姿勢。その良さがなくなっていたなと感じました」とベンドラメが言うマイナス面も、彼の復帰でもちろん解消できる。

チームは大阪戦の勝利で通算12勝10敗として、順位も中地区2位に戻った。ただ中地区首位の川崎サンロッカーズ(19勝3敗)にかなり水をあけられてしまっている。ベンドラメの復帰は反撃の呼び水になるだろう。

ブラジル人の父を持つ彼だが生まれは福岡県で、国籍はもちろん日本。7日に発表された日本代表候補の重点強化選手68名にも入っており、11日から始まる強化合宿にも参加する。ただ今回はポイントガードだけで6名も招集されており、同じ93年組というくくりでもベンドラメに富樫勇樹、笹山貴哉と多士済々。この大阪戦を終えると、彼にはそちらの戦いも待っている。