畠山俊樹

文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

「全員が帰って来て、これから上がるだけ」

大阪エヴェッサは開幕から4勝1敗と好スタートを切りながら、その後は7連敗。プレーオフ進出を目指すチームは序盤戦でつまづいた形となった。それでも、ケガ人続出というチーム事情に加え、7連敗の相手は名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、琉球ゴールデンキングス、千葉ジェッツ、そして先週末の川崎ブレイブサンダースと強豪揃い。連敗に下を向くよりも、課題は課題として受け止めてチーム力を高めることを意識すべきだろう。

ここまで12試合すべてに先発出場しているのはジョシュ・ハレルソンと畠山俊樹の2人だけ。新潟アルビレックスBBから3年ぶりに復帰し、先発ポイントガードとして奮闘する畠山は「なかなか全員が揃わない中でのオフシーズンが長かったので、いかに試合を重ねるごとにうまくなっていくか、成長していくかが大事です」と連敗にも前を向く。

「開幕から少しずつですけど、成長している部分があります。まずはそこをこれからも伸ばせるように。コーチ陣は選手の成長にすごくフォーカスしてくれています。まずは選手がその期待に応えるために毎日ハードワークしないといけない。まだ足りない部分は多いですけど、全員が帰って来てこれから上がるだけだと思うので、しっかりやっていきたいです」

畠山俊樹

「コミュニケーションはしっかり取れているつもり」

大阪はBリーグになっての2シーズン、いずれも勝率は5割を切り、チャンピオンシップ出場を逃している。仕切り直しのシーズン、チームとしていかにまとまり、力を出すかが問われる状況で、新たなポイントガードとして迎えられた畠山への期待は大きい。それだけにケガ人続出でメンバーが固まらない状況はさぞ難しいことだろう。そこはまだ、彼自身も試行錯誤の途中だ。

「プレシーズンマッチと開幕から数試合は周りを生かすところに重きを置きすぎて、自分が攻められるところで攻めなかった部分がありました。それで見方を変えて、行ける時は行こうと。ウチには点を取れる外国籍選手がいて、パプ(ファイ・パプ月瑠)もハードにプレーするので、そこも僕がしっかり行くことで生きてくる。その使い分けもしっかりやっていきたいです」

その上で大阪が勝つために必要なのは、40分間を通じたチームの遂行力を上げること。「僕らは80点、90点を取れるチームではないので、まずはチームで決められたこと、チームで目指すことを一人ひとりが理解してやることが大事です。終盤に良いディフェンス、プレッシャーを掛けられる時間があったんですけど、それを前半から続けられるようにしていかないといけない」

今回、川崎との差はチームの成熟度の差でもあった。「川崎さんと違って5年も6年も同じメンバーでやっているチームではないし、僕は新加入で入って来ています。その部分でもどかしさや、もうちょっとこうしたい、というのはありますが、チームのスタイルやルールに則ってのコミュニケーションはしっかり取れているつもりです。まだ残り試合は多いので、まずはここから。全員がこうやってカムバックできたので、上がることだけを考えてやっていきます」

畠山俊樹

エヴェッサのポテンシャルを生かすも殺すも司令塔次第

2015年に大阪を離れ、西宮ストークスで1年、新潟で2年の経験を積んで戻って来た。大学を出たばかりの当時、bjリーグ時代の大阪ではもっぱらベンチスタート。こうして開幕から先発を託され、意気に感じる部分はあって当然だ。「任せられている部分も、期待されている部分も感じています。そこはしっかり応えたいと思います」と彼は言う。

「新潟で経験したこと、(五十嵐)圭さんから学んだことはすごく大きいので、それをこのチームでしっかり生かしていきたい。今は合田(怜)選手がコンボガードで出て、僕が新潟で経験したことを今経験していると思うので、そこでできるアドバイスは出しています。僕が新潟でそうだったように、彼自身がボールをもっと欲しいと感じる時間は絶対にあるので、その時にはボールを託してあげるとか、そういうことを考えながら今はやっています」

エグゼビア・ギブソンは2試合を通して痛めた指をずっと気にする素振りを見せながら、川崎の『実質オン3』を一人で切り崩す脅威のオフェンス力を見せた。これからコンディションが戻るにつれて、その脅威はさらに増すだろう。日本人離れした運動能力を誇る熊谷尚也、藤髙宗一郎も、チームの攻守が噛み合えばその能力をより発揮できるはず。エヴェッサの秘めるポテンシャルを生かすも殺すも、ベテランの木下博之、そして畠山と2人のポイントガード次第。大阪のスタイルの中で畠山が自分をどう組み込み、チームをどう動かしていくかに注目したい。