文=泉誠一 写真=野口岳彦

バスケを愛する台湾からの観光客をアリーナへ誘いたい

今週末(11月12日、13日)のBリーグは1週お休みとなり、代わりに日本代表が強化のための台湾遠征を実施する。サッカーの国際Aマッチデーやラグビーのウインドウ・マンスのような国際連盟が定める世界的な代表戦実施期間が、バスケットではまだ整備されていない。そのため、今回の強化遠征では台湾リーグの企業チームと対戦することとなった。

考えようによっては寄せ集めの代表チームよりも、息の合ったクラブの方が練習相手としては強化になる。しかし、来年からシーズン中にFIBAワールドカップ予選を開催することが決まっているわけだから、1年前の同時期である今から世界的にテストマッチをできるよう、FIBAがレギュレーションを整備すべきだった。

平日開催の強化試合ではあるが、台湾は応援しに行きやすいメリットがある。すでに応援に行かれた方もいるかもしれない。日本から近く、LCCも飛んでいる。逆に今週行われる野球日本代表「侍ジャパン」の強化試合を見るため、台湾から友人がやってくる。その友人はジャイアンツファンであり、今年のクライマックスシリーズにも訪れていたが、チケットは完売で東京ドームの前で途方に暮れたそうだ。

野球とともに、バスケをこよなく愛する台湾人。ジョーンズカップに行けば、日本代表選手たちは誰彼構わずワーキャー言われて大騒ぎとなっていた。日本政府観光局が調べた2016年1~9月までの訪日外客数を見れば、台湾からのお客様は323万人もやって来ている。500万人の中国人、370万人の韓国人に続く多さ。中国、韓国、台湾の方々の方がバスケを見る目が肥えている。しかも台湾では日本人選手の知名度が高いので、ぜひとも日本のバスケ会場へ誘いたい。

アジアのお客様を迎えるとともに、アジア枠の設定で代表強化

成田空港から1時間ほどの距離にある船橋アリーナを拠点とする千葉ジェッツ。2年前のNBAサマーリーグに出場した富樫勇樹の話題は台湾にも届いていた。富樫がジョーンズカップに初出場した時は、渡邊雄太(ジョージ・ワシントン大学)とともに高校生だったこともインパクトが残っているようで人気が高い。英語でのコミュニケーションを取れるので地元メディアからの取材も多く、認知されている。

最近は大阪旅行が人気のようだ。関西国際空港に降り立つ観光客は大阪はもとより、京都まで足を伸ばすことも厭わない。京都ハンナリーズの岡田優介は台湾でも人気者である。また、頻繁にテレビでNBAの情報も流れていることで、Bリーグにいる元NBA選手の名前も日本のファン以上にピンと来ることはずだ。

台湾人ばかりではない。バスケが国技であるフィリピン人と話せば、日本のバスケのことをよく知っていた。Bリーグのことはもちろん、選手の名前を挙げてもらえば、折茂武彦、竹内兄弟(公輔・譲次)とスラスラ出てくる。

逆にフィリピンの英雄ジミー・アラパグ(元フィリピン代表の熱きポイントガード)が引退表明した話題を振れば、もう話は止まらない。ちなみに話をした彼らは、メディアなどでバスケに関わっているわけではない普通の人たちだった。

インバウンド需要での動員が見込めるようになればアジア枠を設けて、現在は中国CBAに活躍の場を求めている各国代表クラスを集めたい。Bリーグを通じて日々戦うことで慣れることができ、ライバルたちのクセも分かる。アジアで勝ち抜かねばならない日本代表にとって、直結した強化につながっていく。クラブ数が飽和状態で技術レベルが薄まる傾向を打開するためにも、日本人よりも上手くて大きいアジア人に活路を見いだす必要性は迫られることだろう。

日本人の我々が思っているよりも、日本代表選手たちが海外の人たちにその名を知られていたのには驚いた。観客動員数を伸ばすため、日本人よりもバスケを見慣れている環境に住む外国人来訪者をターゲットにしてみてはいかがだろうか。東京オリンピックを前に、『おもてなし』の準備やシミュレーションが今からできる。