レブロン・ジェームズ

フロントが補強を放棄した状況で、レブロンの負担は限りなく大きなものに

昨シーズンのレイカーズは42勝30敗でプレーイン・トーナメントに回り、ウォリアーズに勝ってプレーオフ進出を決めたものの、ファーストラウンドでサンズに敗れた。成功か失敗かで言えば、明らかに『失敗』だ。それでもオールスターを迎える時点での成績は24勝13敗で、今は27勝31敗と状況はさらに悪い。レブロン・ジェームズは地元開催となった今回のオールスターで終始ご機嫌だったが、ニューヨークに戻れば不愉快な現実に向き合わなければいけない。

昨シーズンを終えた時点でレブロンは「レイカーズでキャリアを終えたい」と明言していた。だが、その思いが今も残っているかは疑わしい。キャブズ復帰について「ドアは閉じられていない」と答えたのは彼らしい愛嬌のあるリップサービスだったとしても、ロブ・ペリンカの名前を出すことなく他のGMの手腕を褒めちぎったのは普通ではない。それ以前に、2月上旬にバックスに完敗を喫した際、「このチームはバックスのレベルまで行けると思うか?」との無遠慮な質問に「No」と一言返している。これは補強が必要だというレブロンからフロントへのメッセージだったと思われるが、レイカーズはトレードデッドラインに動かなかった。

もともと今のチームを作るために、レイカーズはかなりの無理をしてきた。ラッセル・ウェストブルック獲得のために将来性のある中堅や若手を一挙に手放し、残るロールプレーヤーまで放出してはチームが回らない。今回のトレードデッドラインで動かなかったのは「パニックにならなかった」という点で評価できるかもしれないが、勝てずに苦しむチームは「フロントは頼りにならない」と受け止めるだろう。

レブロンは今も全盛期のパフォーマンスを維持しているが、37歳の選手に残された時間はそう多くない。身体の衰えは次第にやって来るのではなく、多くの場合はケガをきっかけとして一気にやってくる。今が全盛期だとしても、来年の春がそうだとは限らない。だからこそ、今シーズン後半戦のテコ入れを放棄したかのようなレイカーズの動きにレブロンは冷静でいられない。それが戸惑いなのか、不安なのか、不満なのか怒りなのかは分からないが、両者の関係はネガティブな方向に推移しつつあるようだ。

噂はあったが実現しなかった選択肢としてウェストブルックとジョン・ウォールとのトレードがあるが、ここ数年まともにプレーしていないウォールが今のレイカーズをどれだけ助けられるかは疑問だ。レイカーズがウェストブルックの価値を落としてしまっただけに、彼とのトレードで良い見返りを得るのは難しかったかもしれないが、ロールプレーヤーの補強はできたはず。フランク・ボーゲルはディフェンスからゲームを作るタイプの指揮官であり、長いシーズンを通じて、またプレーオフでは7戦までを計算してゲームプランを立て、序盤の失敗を途中で修正し、最後に優位に立つ。だが、今のレイカーズにはそのための人材が足りない。これを改善せずに放置したことが、今シーズンの『とどめ』になるかもしれない。

レイカーズがここから浮上して良い形でシーズンを終えるとしたら、まずはレブロン、そしてレギュラーシーズン終盤に復帰予定のアンソニー・デイビスがフル回転してチームを引っ張るしかない。だが、今の状況ではレギュラーシーズンも順位を上げるべく手が抜けないし、疲労は蓄積するばかり。レブロンはタイトル獲得のためならどんな無理も厭わないだろうが、今のチーム状況では西カンファレンスの順位を7位から6位に上げるために死力を尽くさなければならない。フロントが補強を放棄した状況を考慮すれば、レブロンの士気が上がらなくても無理はない。

NBAのトッププレーヤーでも、チーム状況が悪ければ来シーズン以降に意識を切り替える者は少なくない。「来シーズンをより良い状況で迎えるために、今は無理をしない」という考え方は周囲の理解も得られる。レブロンがそこから頭一つ抜き出た存在であるのは、チームとファンへの誠実さ、勝利への責任感、そしてシンプルに『あきらめの悪さ』を何度も見せてきたからだ。しかし、今のレイカーズにレブロンが失望しているのだとしたら、「このままでは終われない」という強い気持ちは出てこないだろう。ライバルのクリッパーズ戦で始まる後半戦、最初の数試合でつまずくようなことがあれば、レイカーズはいよいよ空中分解しかねない。