横浜ビー・コルセアーズ

販売済みだったチケットを全席無効とし、収容率50%での再販売に

Bリーグでは多くの選手、スタッフに新型コロナウイルスの感染者が出ており、レギュラーシーズンの複数の試合が行われず、沖縄でのBリーグオールスターも中止となった。横浜ビー・コルセアーズも、1月2日と3日の大阪エヴェッサ戦を終えて感染者を出し、アルバルク東京とのホームゲームが2月に延期された。ここで横浜は、他のクラブとは異なる大きな決断を下している。すでに販売を開始していたホームゲーム、1月29日と30日の千葉ジェッツ戦、2月5日と6日のレバンガ北海道戦のチケットを全席無効、払い戻しとし、収容率50%で再販売したのだ。年明け早々のホームゲームに来場したファンから感染者が出れば、その座席エリアを公表してもいる。

横浜ビー・コルセアーズの白井英介代表は、事の発端をこう語る。「大阪の選手に陽性が出て、マッチアップしていた選手に感染や濃厚接触者判定となる可能性はあると考えていました。そうこうしている間にA東京でも同様の事象が発生し、そこからウチの選手にも陽性反応が出て、選手は7名、スタッフとチアリーダーズにも陽性判定が出ました」

「そのタイミングでTwitterに、試合を見に来たお客様が陽性になって、『このエリアに座っていました』という旨の投稿がありました。そのお客様からご連絡いただいた時点で、チーム活動について全社でミーティングを行い、方針を話し合いました」

今年に入って感染者数が全国的に急増する中で、収容率を100%に戻すのは時期尚早だったのではないかとの声もあるが、白井代表はそれを否定する。「もともとA東京との試合があるはずだった1月8日と9日のところで保健所とやり取りする中で、陽性の方が観客席にいても、同じエリアに座っているだけでは濃厚接触者に当たらないとの確認が取れていました。各種スポーツイベントの感染リスクを調査・研究している専門家の話としても、試合会場での観客間の感染リスクは、適切な感染対策を履行することで、科学的に考えてほぼないとのことです。ビーコルの会場は12月25日にBリーグと産総研(産業技術総合研究所)が実施した調査結果でもマスク着用率が他会場より高く、CO2濃度も低かった。つまり換気もよくできていたんです。だからこそ、試合観戦により観客に感染が起きたように見えてしまうのではないかと複雑な思いでした」

そこから白井代表が陣頭指揮を執り、陽性者を出したエリアの観客一人ひとりに電話をかけた。保健所から「濃厚接触者にはあたらないが、念のためPCR検査を受けるように連絡する」との旨を伝えられたのがきっかけだ。

「その時点で保健所のリソースは逼迫し始めて、いつ電話できるか分からないとの話でした。濃厚接触者には当たらなくても、急に保健所から連絡が来て『この試合に行っていましたよね、PCR検査を受けてください』と言われたら、お客様の心理的にはまさに『観戦者の間で感染が拡大している』と受け止められかねない。それであれば我々が誠意を持ってコミュニケーションを取りたいと電話をしました」

横浜ビー・コルセアーズ

「100%は危険で50%だと安全、という価値観が広まってはいけない」

そこで分かったのは、電話を受けたほとんどの人が「陽性になった人と私はどれぐらい距離がありましたか?」と質問することだ。体温管理や消毒、マスク着用、黙食といったルールを守れば感染リスクはないと認識して試合会場に来ていても、科学的な判断とは別の心理が存在する。

「我々の会場が感染防止対策をしっかり取って、100%収容でも科学的にリスクはあり得ないとしていても、感染者数が日々ニュースになる中で不安は出てきます。お客様の感染が複数起きた以上は、不安を払拭するまではお客様の心理的安全に寄り添わなければいけないと判断しました」と白井代表は言う。

それが、ビーコルが自分たちの判断で収容率を100%から50%へと変更した理由だ。白井代表が「千葉ジェッツ戦は売れ行きが好調でしたし、富樫勇樹選手vs河村勇輝選手の対決が見たい人も多かったと思います。収益としてはかなり痛いです」と言うように、収容率を下げるのはクラブの収入減に直結する。チケット再販売は手数料もかかれば手間も取られる。それでも、社内で強い反対意見が出ることはなく、またスポンサーもその方針に理解を示したという。

「100%は危険で50%だと安全、という価値観が広まってはいけないのですが、この時期はお客様の心理に寄り添って50%で開催する判断をしました。ただ、それはこの1カ月だけです。飛沫感染や空気感染のリスク、選手から観客への感染の可能性がどれぐらいあるのか、外部機関とも連携してあらためて調査し、対策の検討を行って、3月から100%に戻します」

そしてあらためて、バスケファンが安心安全に試合観戦ができる環境を作ると白井代表は誓う。「リーグもレギュレーションを検討し直し、クラブも感染を抑えるためにやれること、考えられる手段はすべてやり尽くしています。政府や自治体が発令しているガイドラインよりもかなり厳しい基準で運営に当たっています。私はエンタテインメントを生で観戦することには何物にも代えがたい価値があると思っています。先日の秋田ノーザンハピネッツさんとの試合は私も現場で見て感動しました。バスケの試合が生み出すストーリーは、会場で見るのが一番の価値だと思います。それを回復するために我々はやれることすべてをやりますし、お客様にはその姿を見て安心していただきたいです」

「不安があるのは分かりますし、世の中の状況を見てもまだまだ安心できる状況ではないと思うんですけど、我々は安心安全な試合運営をしていきますので、是非一人でも多くの方にアリーナに足を運んでいただきたい。そこで良い試合を見せることが我々の使命だと思い、そこに全力を尽くします」